近年、DEIB(Diversity, Equity, Inclusion, and Belonging)の概念が注目されています。DEIBは、組織やコミュニティが多様で公平な環境を築くための重要な指針であり、企業が持続可能な成長を実現するために欠かせない要素として位置づけられています。
この記事では、DEIBの基本概念や、DEIBに注目が集まる背景、近年の企業におけるDEIBの取り組みについて紹介します。
<目次>
DEIBとは
DEIBとは、Diversity(ダイバーシティ)、Equity(エクイティ)、Inclusion(インクルージョン)、Belonging(ビロンギング)の4つの概念を指し、組織やコミュニティが多様な人材の価値を認識し、誰もが公平に参加できる環境を整え、多様な人材がその価値を最大限に発揮できる環境をつくるための重要な要素です。それぞれの概念は相互に関連し、組み合わさることで、より包括的で効果的な組織の基盤を形成します。企業においては、従業員の満足度や組織の成長や革新を促進するために重要とされています。
次に、Diversity(ダイバーシティ)、Equity(エクイティ)、Inclusion(インクルージョン)、Belonging(ビロンギング)の基本概念について、紹介します。
Diversity(ダイバーシティ)
ダイバーシティとは、多様性を持つ人々が集まることを意味します。具体的には年齢、性別、国籍、宗教、文化、価値観、障がいの有無など、個々の違いや特性を尊重し、互いに認め合うことです。
ダイバーシティの推進は、異なる属性や価値観などが交わることで組織に多様な視点やアイデアをもたらし、問題解決力や創造性の向上に繋がると近年特に重視されています。また、企業においてダイバーシティを重視することで、幅広い顧客層への対応力も向上し、組織の競争力が高まるというメリットがあります。
Equity(エクイティ)
エクイティとは、公平性を意味し、個々のニーズに応じたリソースやサポートを提供し、すべての人が同じスタートラインに立ち、等しく機会を得られるようにする考え方です。
なお、エクイティは「Equality(平等)」とアプローチが異なります。平等はすべての人に同じものを提供し、全員が同じスタートラインに立つことを目指すアプローチですが、人によって同じものを提供されることで不便になる可能性があります。例えば、背の高い人や背の低い人がいる中で全員に同じ高さの椅子を用意した場合、一部の人にとってはその椅子が不便になる可能性があります。
一方、エクイティは、それぞれ異なるバックグラウンドや状況にあることを認識し、個々のニーズに応じた支援を行い、実質的な平等(同じ成果)を達成することを目指すアプローチです。背の低い人には足が届く低めの椅子を、背の高い人には高めの椅子を用意することで、全員が同じ快適な環境が整います。
そして、エクイティを推進することは、インクルージョンと密接に関連し、全員が活躍できる職場環境の整備につながります。
Inclusion(インクルージョン)
インクルージョンとは、組織内で多様な個人が尊重され、全員が対等に参加できる環境を築くことです。インクルージョンが促進されることで、包摂的な文化が確立され、従業員のエンゲージメントが高まり、組織全体の士気や生産性が向上します。
また、ダイバーシティとインクルージョンはよくセットで使われますが、それぞれ異なる意味を持っています。ダイバーシティが「多様性を持つ人々が集まること」であるのに対し、インクルージョンは「その多様な人々が対等に参加し、受け入れられる環境をつくること」を意味します。ダイバーシティとインクルージョンを併せて推進することで、すべての人が活躍できる環境が整い、個々の特性が最大限に発揮される状態を目指すことが可能になります。
Belonging(ビロンギング)
ビロンギングとは、組織内での「所属感・帰属意識」を意味し、組織内で「自分に居場所がある」と感じられる状態を指します。ダイバーシティ及びインクルージョンが推進され、全員が公平な環境な環境が整うことで、ビロンギング(帰属意識)を持つ環境が生まれます。
ビロンギングは、エクイティやインクルージョンとともに、エンゲージメントやパフォーマンス、心理的安全性の向上に繋がる重要な要素です。企業がビロンギングを高める取り組みを行うことで、従業員の満足度や定着率の向上が期待されます。そして離職率の低減や職場の一体感向上にもつながり、組織の安定と成長を促進します。
DEIBに注目が集まる背景
DEIBに注目が集まる背景には、グローバル化やジェンダー平等、社会の多様性の尊重、働き方改革、持続可能な組織づくりが求められる社会情勢の変化などがあります。
世界的にグローバル化が進展し、企業の社会的責任や職場の多様性に対する期待が高まる中で、多様な人材を活用することが企業の成長につながるという認識が広がり、DEIBの重要性が増しています。
加えて、デジタル技術の進化により、リモートワークなど働き方の柔軟性も増したため、様々なライフスタイルやバックグラウンドを持つ人々が共に働く場が広がっています。
また、働き手側も、多様な背景を持つ人々が平等に活躍できる職場を求める傾向が強まっており、企業はこのニーズに応えることが必要とされています。
企業が持続的に成長するためには、多様な視点や価値観を取り入れ、柔軟で包括的な組織づくりが重要となっています。
近年の企業におけるDEIBの取り組み
競争力向上やブランド価値向上を目指し、ダイバーシティ採用を行う企業が増えています。異なる属性や背景をもつ人材が集まることで、多様な視点やアイデアを取り入れたサービスや商品を開発することができ、市場での競争力が向上します。
また、多様な人材が対等に活躍できる職場環境を整えるために柔軟な勤務時間や在宅勤務の導入、バリアフリー設備の整備、性別や年齢に関わらず、昇進や研修の機会が公平に与えられるよう、透明性のある評価制度の導入など、従業員一人ひとりの状況に応じた支援やサポートを提供する企業も増えています。
これらの取り組みは、企業の競争力を高め、従業員が安心して働ける職場環境を築くための重要な要素です。DEIBの推進は、従業員の多様なニーズに応えるだけでなく、組織全体のパフォーマンスやイノベーションを向上させる効果があります。
12月4日~12月10日 人権週間
毎年、日本では12月4日から12月10日は人権週間として、各地で人権に関するさまざまな啓発活動やイベントが行われています。人権週間は、職場や学校、地域社会での差別や偏見を解消し、多様性の尊重や平等を推進することを目指し、人権尊重の重要性を広めるための啓発週間です。
近年は、人権週間に合わせて人権研修やダイバーシティ研修を実施する企業も増えており、従業員の人権意識の向上を図る絶好の機会です。研修により組織全体が共通認識をもち、多様性を尊重し、包摂する文化が根付けば、職場環境の改善や業績の向上、従業員のモチベーション向上といった多くの成果が期待できるでしょう。
まとめ
DEIB(ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン、ビロンギング)は、単なる概念に留まらず、組織の持続的な成長に欠かせない要素です。4つの概念が相互に関連し、組み合わさることで、より包括的で効果的な組織基盤を形成します。一人ひとりが多様性を尊重し、誰もが受け入れられ、公平に参加できる環境を作ることが、持続可能な成長へ繋がる鍵となるでしょう。
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最終更新日: 2024-11-28