ナレッジマネジメントとは、組織内に蓄積された知識やノウハウを共有・活用し、業務の効率化や競争力の向上を図るマネジメント手法です。人材育成において、知識の共有や業務ノウハウの継承が大きな課題となることが多く、適切なナレッジマネジメントの導入が重要となります。ナレッジマネジメントを活用することで、従業員のスキル向上を促進し、組織全体の生産性を高めるとともに、業務の属人化を防ぐことができます。
この記事では、ナレッジマネジメントの基本概念から、導入のメリット、導入時のポイントを紹介します。
<目次>
ナレッジマネジメントとは
ナレッジマネジメントとは、組織内に蓄積された知識やノウハウを効果的に共有・活用し、業務の効率化や競争力の向上を図るマネジメント手法です。人材育成において、組織の持つ知識をスムーズに習得し、業務に適応することは非常に重要です。そのため、適切なナレッジマネジメントの仕組みが整備されている組織ほど、人材の成長速度が早まります。
形式知と暗黙知の違い
ナレッジマネジメントの基本概念として、「形式知」と「暗黙知」という2つの知識形態があります。
形式知
形式知とは、業務マニュアルや手順書、データベースや研修資料、仕様書・設計書など、文書やデジタルデータとして明文化され、誰でも容易に共有・活用できる知識を指します。形式知は、組織の知識として整理し、適切なツールを活用して一元管理することで、業務の標準化や効率化を促進できます。特に、人材育成おいては、必要な知識を体系的に整理し、明確な形で提供することで、従業員のスキル向上を促進し、即戦力としての成長を促す効果が期待できます。
暗黙知
暗黙知とは、営業のコツや熟練者のノウハウ、現場での判断基準など、個人の経験やスキルに基づく知識のことを指します。暗黙知は、個々の実践や直感に依存することが多く、言語化や体系化が難しいため、いかに組織全体で共有できる形にするかが課題となります。そのため、社内勉強会や研修などナレッジ共有の「場」を設けたり、OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)の仕組みを活用し、組織全体に経験を通じた知識を広めることが重要です。

ナレッジマネジメントの重要性
グローバル化やDX(デジタルトランスフォーメーション)に対応するためには、従業員の知識を最大限に活用することが求められます。人材育成において、適切なナレッジマネジメントの仕組みがなければ、従業員のスキル習得が遅れ、組織全体の生産性の低下を招く可能性があります。経験やノウハウを効果的に共有し、継続的に学び続ける環境を整えることが、競争力のある人材を育成するうえで重要となります。
組織の競争力強化との関連性
知識を適切に管理し、組織全体で共有することは、組織の競争力を大きく向上させる要素の一つです。
情報が整理され、誰もが必要な知識にアクセスできる環境を整えることで、迅速な意思決定が可能になります。意思決定のスピードが上がることで、市場の変化やビジネスチャンスに柔軟に対応できるようになります。さらに、知識の組み合わせによって新たなアイデアや技術革新が生まれ、イノベーションを促進する効果も期待できます。
また、業務の属人化を防ぐこともナレッジマネジメントの重要な役割です。特定の個人に依存しない業務体制を構築することで、従業員の異動や退職による影響を最小限に抑え、組織全体の安定性を確保できます。

ナレッジマネジメント導入によるメリット
業務効率化や生産性向上
業務の効率化や生産性の向上には、知識のマニュアル化が重要な役割を果たします。明文化された業務手順やノウハウを活用することで、従業員は必要な知識を迅速に習得でき、人材育成の面でも成長を加速させることができます。また、業務の標準化が進むことで、個人ごとのやり方に依存せず、組織全体で統一されたプロセスが確立されます。その結果、無駄な作業が削減され、生産性の向上につながります。
業務の属人化防止
業務の属人化を防ぐためには、ベテラン従業員の持つノウハウをデジタル化し、組織全体で活用できる環境を整えることが重要です。経験豊富な従業員が持つ知識やスキルを形式知として整理し、データベースやマニュアルとして共有することで、新たに入社した従業員や異動した従業員が迅速に必要な情報にアクセスでき、業務の一貫性を保つことができます。このような取り組みは、個々の従業員に依存せず、組織全体の強化につながります。
人材育成の効率化
人材育成の効率化には、OJTや研修とナレッジ共有ツールを組み合わせることが効果的です。実践的な経験を積みながら、組織全体で共有された知識を活用することで業務に必要な知識やスキルを短期間で習得することができ、即戦力としての成長を促進できます。これにより、人材育成のスピードと質を高め、組織の競争力を強化することが可能になります。
組織内の連携強化
組織内の連携強化には、ナレッジ共有ツールの活用が効果的です。部署を超えた情報交換を促進することで、各部門の知識やノウハウが一元化され、従業員が迅速に必要な情報を取得できるようになります。このような仕組みを通じて、異なる部署間での協力が活発化し、問題解決のスピードや創造的なアイデアの生産性が向上します。人材育成の観点では、これにより従業員同士が相互に学び合い、全体的なスキル向上が図られるとともに、組織全体の協力体制が強化されます。
ナレッジマネジメント導入時のポイント
1. 知識資産の特定
まずは、組織内にどのような知識が存在しているのかを洗い出します。知識を洗い出す際は、以下のような観点があります。
- 業務手順やプロセスに関する知識
- 顧客対応や営業ノウハウ
- 技術的なノウハウ
- 企業文化や社内の意思決定プロセスに関する知識
- マネジメントやプロジェクト管理手法、目標設定と評価・フィードバックに関する知識
このような知識は、個々の経験や業務データ、社内ドキュメント、会議記録などに散在していることが多いため、アンケートやヒアリング、業務フローの可視化などを活用しながら、組織内の知識資産を洗い出します。
2. 形式知と暗黙知への分類
次に洗い出した知識資産を体系的に分類します。「形式知」と「暗黙知」の観点で分類することで、それぞれの特性に応じた管理・共有方法を設計できます。

3. 知識資産の管理と活用
知識を特定し、分類した後は、知識を有効活用できる仕組みを構築します。効果的にナレッジ共有をするためには、適切なツールやシステムの導入と仕組みを整えることが重要です。
近年はデジタル技術の進化により、クラウド上で形式知をデータベース化し、一元管理できるものや、暗黙知を共有するための社内SNSツールなど、さまざまなナレッジ共有ツールやシステムがあります。ナレッジ共有ツールやシステムを活用することで、組織内での情報の整理や共有が容易になり、誰でも必要な知識にアクセスできる環境を整えることができます。また、作業手順や業務ノウハウを動画化することで、視覚的に理解しやすくなります。さらにeラーニング(オンライン上で学習できる環境)を整備することで、各自が柔軟に学習でき、知識習得の促進につながります。
そして、ナレッジ共有ツールやシステムの活用とあわせてOJTや社内研修会を組合せることで、より効果的な人材育成が可能となります。
知識資産の特定と分類は、組織のナレッジマネジメントを成功させるための第一歩です。形式知と暗黙知を適切に分類し、それぞれに適した方法で共有・管理することで、従業員の知識習得の向上や業務の効率化を実現できます。特に、暗黙知をいかにして組織全体に広げるかが鍵となるため、OJTやナレッジ共有の「場」の整備など、多面的なアプローチが求められます。
4. 継続的な改善と意識改革
ナレッジ共有の仕組みを構築した後も定期的にナレッジ共有の状況をチェックし、問題点や改善点を洗い出すこともナレッジマネジメントの効果を最大化するために重要です。継続的な改善を行うことで、ナレッジマネジメントの効果を長期的に維持しながら、システムやプロセスの質を向上させることができ、組織の成長を支える基盤となります。
まとめ
ナレッジマネジメントは、組織の知識資産を最大限に活用し、業務の効率化や人材育成の加速、競争力の向上を実現するために不可欠な手法です。形式知と暗黙知を適切に分類・管理し、ナレッジ共有ツールや研修、OJTを組み合わせることで、知識の共有を促進し、属人化を防ぐことができます。
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最終更新日: 2025-03-26