近年、オンボーディングという取り組みが注目されています。オンボーディングとは、新しく組織に加わった社員が企業や組織、業務にスムーズに適応するためのプロセスを指します。
この記事では、オンボーディングの基本的な概念や施策例、実施の流れなどについて、紹介します。
<目次>
オンボーディングとは
オンボーディングとは、新しく組織に加わった人材が早期に組織の文化や業務に慣れ、活躍できるように支援する取り組みのことを言います。また、オンボーディングは新入社員だけでなく、異動や転職で新しいポジションに就いた既存社員にも適用され、早期の定着と効果的なパフォーマンス発揮を支援することを目的としています。
元々オンボーディングは、船や飛行機に乗っていると言う意味の「on-board」から派生した言葉で、船や飛行機に新しく乗り込んできた乗務員に対して、いち早く現場に慣れてもらうためのプロセスを意味します。
オンボーディングは、新入社員はもちろん、中途採用者や、場合によっては社内異動者なども対象になります。新しい環境や組織風土に順応し、ルールや業務を覚えていくことは中々難しいものです。オンボーディングによる継続的なサポートは、社員が新たな環境に適応し、能力を発揮しながら成長することに役立ちます。
オンボーディングが必要とされる背景
早期離職
厚生労働省の調査によると、新規学卒者の3年以内の離職率は約3割となっています。転職市場が活発化する中、中途採用者の定着率が課題となっている企業も少なくありません。早期離職の理由は、仕事内容の不一致や人間関係など様々ですが、オンボーディングの実施によって、それらのギャップを最小化することが期待されています。
人材不足
人材の売り手市場と言われる昨今、人材不足は企業にとって重要な課題です。新たな人材の採用だけでなく、優秀な人材の採用も難しくなっています。オンボーディングは人材の定着率向上に取り組む手段として活用されています。
働き方の変化
リモートワークの普及により、オンライン上での業務習得やコミュニケーションの機会が増加しました。オンライン上で、新入社員や中途社員がどのように組織に慣れていくかなど、新しい課題が出てきたことで、オンボーディングの重要性が益々意識されるようになりました。
オンボーディングが人材定着に与えるメリットや重要性
早期離職防止
早期離職の原因としては、組織文化に馴染めない、業務内容が理解できていない、上司や同僚とのコミュニケーションがうまくいかないなどがあります。効果的なオンボーディングはこれらの問題を早期に発見し、解決策を提供するため、早期離職を防ぎ、人材定着率の向上にも寄与します。
従業員エンゲージメントの向上
オンボーディングは、社員が組織のビジョンやミッションに共感し、モチベーションを高める機会でもあります。初期段階で仕事に対する期待や目標を明確にすることで、従業員エンゲージメントが高まり、仕事への意欲や積極性が増し、組織全体のパフォーマンス向上につながります。
新しい環境への適応
異動や転職者も新たな職場においては、これまで経験したことのない業務内容や新しいスキルが求められたり、他のチームメンバーとの関係構築が必要になります。前職との違いや組織文化への適応に時間がかかることもあります。オンボーディングはこうした課題を乗り越えるための重要なプロセスです。
オンボーディング施策例
メンター制度
メンター制度とは、先輩社員が後輩社員をサポートすることです。先輩社員が仕事や人間関係などの不安、悩みなどについて、サポートすることで、後輩社員は安心して業務に取り組むことができ、早期離職を防ぐ効果が期待できます。
1on1ミーティング
定期的な1on1ミーティングを実施することで、新入社員や中途社員の状況を把握し、早期に悩みや疑問を発見することができます。また、直接コミュニケーションをとることで、信頼関係を強化します。
基礎知識・スキルの習得
オンボーディングの初期段階で、業務プロセスの説明や、必要なツールの使い方、チームメンバーとの協力方法など、新しい業務に必要な知識や技術を習得するための研修を行いましょう。
基礎知識やプロセス、ツールの使い方などについては、eラーニングを活用する方法もあります。eラーニングを取り入れることで、時間や場所にとらわれず自分のペースで研修を受講することができます。
フィードバック
オンボーディングの進捗をしっかりと管理し、成果を評価することも重要です。定期的に目標を設定し、その達成度を確認することで、社員のモチベーションを高め、課題解決に向けたアクションを取ることができます。
オンボーディング実施の流れ
事前準備
オンボーディングの実施には、事前準備が必要不可欠です。
まずは、「1ヶ月後には所属部署の業務を理解できるようになる」「3ヶ月後にチーム内でプレゼンテーションを行えるようになる」など、短期〜中長期の目標と達成のためのスケジュールを明確にしましょう。
そして、どのタイミングでどのような施策を実施するか、どのように進捗を測定するかなどの計画の作成や、マニュアル作成、育成担当者の選定、研修の準備など、初日からスムーズに受け入れられるようにしましょう。
作成した計画は、上司やチームメンバーに共有し、受け入れ環境を整えたうえで、計画に沿って施策を実行します。実施後も定期的な面談を行い、状況把握と状況に応じて適宜施策の改善を図ることが大切です。
入社前の取り組み
入社前の段階からオンボーディングを実施します。離職理由のひとつである仕事内容の不一致を防ぐためにも、この段階の施策は重要です。施策例としては、入社前研修、先輩社員との懇親会、内定者交流会、面談の実施などがあります。また、入社前後に、新入社員に求める役割や期待値を明確に伝えることもポイントです。双方のギャップを最小化することは、早期離職の防止に繋がります。内定者の不安や疑問点を解決し、入社意欲を高めるとともに、信頼関係を構築する取り組みを行いましょう。
入社直後・正式配属直後の取り組み
入社直後また正式配属後は、不安が大きい時期であると言えます。新たな環境で緊張と不安も抱えており、配属された部署でのコミュニケーション不足や人間関係、自身が描くキャリアビジョンとの不一致など、見えないリスクが潜んでいます。この期間には、組織や部署のルール、業務習得に関するサポート施策を行い、新しい環境に馴染んでもらうことが大切です。
また、新入社員研修などがある新卒社員と比べ、中途社員へのフォローが疎かになってしまうこともあります。即戦力が期待される中途社員に対してもオンボーディングを行い、業務内容の理解などを促すことが必要です。
入社から数ヶ月経った後も定期的な面談などを実施し、継続的なフォローを行いましょう。
まとめ
オンボーディングとは、新たに採用した人材が早期に組織の文化や業務に慣れ、活躍できるように支援する取り組みのことです。効果的なオンボーディングを実施することで、オンボーディングには、離職率の低下や従業員エンゲージメントの向上、生産性の向上などのメリットがあります。オンボーディングを実施する際は、事前準備をしっかりと行い、継続的に支援を行うようにしましょう。
教材販売(動画コンテンツ/eラーニングコンテンツ)
オン・ボーディングとリテンション
入社後、早期に組織の一員として定着してもらうためのステップとメソッド(迎え入れ施策)、帰属意識を高め、人材流出防止を図るための施策を紹介します。
メンター実践~メンタリングを実践する~
メンター制度の特徴やメンターの役割、メンターとメンティそれぞれのメリット、メンタリングを実践するうえでのポイントについて、紹介します。
最終更新日: 2025-01-15