「女性活躍推進法」において、これまでは常時、301人以上の従業員を雇用する企業に対して、いくつかの取り組みが義務化されていましたが、2022年4月1日より、義務の対象が常時、101人以上の従業員を雇用する企業に対象が拡大されました。
今回は「女性活躍推進法」で企業が取り組む4ステップをお伝えします。
<目次>
女性活躍推進法とは
「女性活躍推進法」の正式名称は、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」と言い、働く意欲のある女性がイキイキと能力を発揮し活躍できる社会実現を目指し、企業に女性の労働環境を整えることを義務付けています。
企業が取り組む義務は、一般事業主行動計画の策定・届出と社内周知・社外公表の4つです。
女性活躍推進法の背景
日本は、長きに渡り「男性社会」が続いていることから、国際的に見ても日本女性の活躍の場が少なく、女性の雇用率・待遇の低さなどの問題があります。
出典:「女性の就業希望者の内訳(令和2(2020)年)」(男女共同参画局)
- 女性管理職の割合が世界的に見て低い(2018年の調査:約15%)
- 出産や介護を機に働けなくなる女性が多い
- 復職してもパートや非正規雇用の割合が高い
また、これからの日本は、2025年に団塊世代が65歳以上となる超高齢化社会と、少子化による労働人口の減少が否応なしに訪れることや、激変する社会情勢の中で国際競争を生き抜く必要があります。
そのためには、多様な人材確保と、女性の持つ多様なスキルや能力を最大限に活用することが重要と言えるため、「2025年まで」という期限付きで「女性活躍推進法」が施行されています。
企業の取り組み4ステップ
「女性活躍推進法」で企業が取り組むステップは、次の4つです。
- 自社の女性雇用者の活躍状況の把握・課題分析
- 一般事業主行動計画の策定・社内周知・社外公表
- 一般事業主行動計画の届出
- 一般事業主行動計画の実施・効果の測定
一般事業主行動計画は、次世代育成支援対策推進法(次世代法)に基づいて行われる、企業が従業員の仕事と子育ての両立を図るための雇用環境整備や、子育て世代以外の従業員を含めた労働条件の整備に取り組むための計画(計画期間・目標・達成のための対策、実施期間)を指します。
2016年に法律で制定された当初の一般事業主行動計画の策定・届出の義務は、労働者数301人以上の事業主を対象としていましたが、2019年の法改正で義務の対象が拡大され、2022年4月1日から常時雇用する労働者数が101人以上、300人以下の事業主となっています。
従業員が101人以上の企業は、一般事業主行動計画の策定・届出・公表・周知が義務付けられ、100人以下の企業は、努力義務が求められています。
参考:「令和4年4月1日から女性活躍推進法に基づく行動計画を策定・届出・情報公表の義務化改定版(周知リーフレット)」(厚生労働省)
Step1:自社の女性活躍状況の把握
企業が最初に行うの、自社内での女性の活躍状況の把握です。
- 採用者・労働者に占める女性の比率計算
間近の事業年度の女性の採用者数 ÷ 間近の事業年度の採用者数 × 100(%)
比率をみる際は、雇用管理区分(総合職・一般職・事務職・営業職・技術職・専門職など)ごとに把握する必要があります。男性が優位になっていないか確認することができます。
- 平均勤続年数の男女比の計算
女性の平均勤続年数 ÷ 男性の平均勤続年数
勤続年数での男女比率を雇用管理区分ごとに確認し、それぞれの区分で女性の割合がどれくらいなのか確認します。
- 月別の平均残業時間数の計算
各月の総残業時間数(法廷時間外労働と法定休日労働) ÷ 労働者数
労働時間の状況を把握することで、長時間労働になっていないか、健康管理時間を確認します。
- 管理職に占める女性比率の計算
女性の管理職数 ÷ 管理職数 × 100(%)
ここでいう管理職とは、課長以上の役職を指します。女性管理職が少なくないか確認しましょう。
また、仕事と子育ての両立に支障をきたしていることはないか分析します。
- 妊娠・出産を機に退職する従業員数
- 子育て中の従業員数
- 育児休業・看護休暇・子育てのための柔軟な働き方
(性別・年齢別の利用者数・平均的な利用期間・休業中の業務処理の仕方)
雇用者のニーズと課題分析
女性雇用者の活躍状況を数値が把握できたら、次に女性雇用者のニーズを把握します。
- WLB(ワーク・ライフ・バランス)支援制度の認知度
- 育児介護休業
- 短時間勤務制度
- フレックスタイム制度
- 事業所内の託児所の設置
- 在宅勤務 など
- 現在の支援制度に対する満足度
- 仕事と子育ての両立で苦労していること
- 労働時間の短縮や年次有給休暇の取得への希望
- 会社に対する支援制度導入の要望 など
女性活躍状況の分析によって自社の弱点を見つけ、課題を解決するためには具体的な改善策を考える必要があります。
Step2:一般事業主行動計画の策定・周知・公表
一般事業主行動計画の策定を行う際のポイントは4つです。
- 計画期間
- 数値目標
- 取組の内容
- 取組期間(実施期間)
「女性活躍推進法」は2025年までの時限措置のため、残り3年間で進捗を検証する必要があります。
組織全体への周知
また、一般事業主行動計画を策定・変更した場合、組織全体で取り組むためにも内容は、業務に関わる全ての労働者・雇用者(非正社員・派遣社員含め)に周知することが必要です。
【周知方法】
掲示・電子メール・企業内ネットワークへの掲載・書面での配布など
【メリット】
企業は女性の活躍推進の取組みをアピールすることで、社全体に良い影響を与え業務効率に繋げることができます。
なぜなら、企業による環境改善の取り組みは、社内の女性雇用者たちに安心感を与えるだけでなく、他の社員たちからの信頼を得やすいからです。
社外への公表
一般事業主行動計画を社外に公表するメリットは、企業の取組みを社会へアピールすることで社会からの信頼を得られやすく、その効果は求人募集にも影響します。
【公表方法】
公表する方法は、自社のホームページ掲載だけでなく、厚生労働省のサイトでも掲載することが可能です。
厚生労働省「女性の活躍推進企業データベース」
Step3:一般事業主行動計画の届出
一般事業主行動計画の策定・変更をしたら、「一般事業主行動計画の策定・変更届」の様式に記載し、電子申請・郵便・持参のいずれかの方法で、都道府県労働局に届け出ます。
Step4:一般事業主行動計画の実施・効果測定
一般事業主行動計画の策定を届け出た後は、計画に基づいた実施を行い、定期的に実施状況を評価します。
- 数値目標の達成状況
- 取組の実施状況
えるぼし認定とは
女性の活躍を応援する企業の取組みが優良であれば、労働局へ申請することで厚生労働大臣による「えるぼし」の認定が得られます。
企業は、商品や社外広告などに「えるぼし」マークを使用することができるため、女性活躍推進企業であることを広く社会へアピールすることができ、認知度を上げることができます。
2020年からは、更に水準の高い目標で女性の活躍を行う企業には、「えるぼし認定」よりアップグレードした「プラチナえるぼし」の認定が付与され、ホワイト企業としての認知と注目を集めています。
最終更新日: 2023-09-22