動画は、「実写動画」と「アニメーション動画」の大きく2つに分けられます。アニメーション動画は、かつては子供向けのTV番組のイメージが強かったものですが、昨今ではいろいろな場面で見かけられるようになりました。
実は「アニメーション動画」を採用している企業は少なくありません。 なぜ、企業が「実写」ではなく「アニメーション」の動画を採用するのでしょうか。
ここでは、アニメーション動画の表現の種類に焦点を当てて解説をしながら、アニメーション動画の魅力やどんな場面で使われるかをご紹介します。もしかしたら、「アニメーション」といってイメージするものからは少しかけ離れたものもあるかもしれません。
これから動画制作をご検討される方は、是非参考にしてみてください。
アニメーション動画の種類
まずは、実際に制作されている様々なアニメーション動画の表現の中から、種類を5つピックアップしてご紹介致します。分類方法にも様々なものがありますが、ひとつの例としてご参考いただければと思います。
1. モーショングラフィックス
図形・写真・アイコンといった静止画に、動き(モーション)+視覚表現(グラフィック)を加えたもの全般をモーショングラフィックスと呼びます。普段、私たちが目にしているアニメーション動画で一番多いタイプです。素材の持つ特性に、動きと視覚表現がプラスされることで、より効果的なメッセージ性を発し、視聴者へインパクトを与えることができます。更に、そこに音(音声・音楽・効果音)を組み合わせると、より記憶に残る動画を制作することができます。
また、モーショングラフィックスをさらに細分化して、下記のように呼ぶこともあります。
◆モーションロゴ
モーショングラフィックスの代表的な表現の1つにモーションロゴ(アニメーションロゴ)があります。企業のロゴマークのアニメーション表現には常に同じ動き・ジングル音がついていて、その動きや音がセットになってロゴとして運用されています。動画の中で、ただ表示する・社名を読み上げるだけよりも、より視聴者に企業やブランドのイメージを印象付けることができます。
◆インフォグラフィックアニメーション
情報をグラフィックを使って分かりやすく可視化することをインフォグラフィックス(infographics)と呼びます。テキストだけでは伝わりにくい情報や数値をアピールしたい場合など、グラフ・図表・写真を使って、見やすく、また美しく整理し、大事な情報を直感的に理解できるようにする効果があります。そのグラフィックに動きを加えたものがインフォグラフィックアニメーションです。
見やすく整理された情報の中に動きが加わることで、より重要な情報が何かがとらえやすくなります。表の中で大きな数字を3つまで順にサイズを変えながら表示したり、グラフの折れ線を、時系列を追って順に表示していくことで、数値の振れ幅が感覚的に分かりやすくなります。
このように、情報の中で何が大事か、要点を整理して視聴者に伝えたいときに活用します。
◆ タイポグラフィアニメーション
文字や文章を読みやすく、または美しく見せるための技術のことを「タイポグラフィ」といいますが、文字を素材としてアニメーション表現(動き+視覚表現)を加えて映像化したものを「タイポグラフィアニメーション」といいます。「キネティック・タイポグラフィ」と呼ばれることも。
文字の大きさを伸縮させたり、文字に捻じりを加えたり、分散させたりなど、様々な表現手法を使って変化をもたせることで、そのテキストに対して注目を集めたり興味を惹くことができるほか、ワクワクする気持ちの喚起や、視聴者を飽きさせない効果も期待できます。文字が元々持っている美しさを利用して、メッセージに美しさや楽しみを加えることができる表現です。また、テキストをそのまま読ませることもできるので、制作側の意図をダイレクトに伝えやすいメリットがあります。
◆ ピクトグラムアニメーション
非常口・トイレ・禁煙マークなど、シンプルなグラフィックでその意味するところをテキストを使わずに伝えられるよう作られた絵記号をピクトグラムといいます。主に公共空間で目にすることが多いかと思いますが、1964年東京オリンピックの例がよく引き合いに出されます。
そのピクトグラムに、動き+視覚表現を加えて動画にしたものをピクトグラムアニメーションと呼びます。ピクトグラムは誰が見ても意味が理解できるように作られているため、動画にした場合でもシンプルな情報伝達となり分かりやすいため、インターナショナルな場でも使用が可能です。
いろいろな場面や意味をピクトグラムに落とし込む場合、簡単な一つの絵におさめるには難しい、かえって分かりづらくなってしまうテーマもあります。そういった場合に、ピクトグラムに動きを加えることでより分かりやすく、誤解のない情報伝達ができるようになります。
モーショングラフィックスの一例として、サービス紹介の動画を掲載します。
2. イラストアニメーション
少しずつ違う複数のイラストを、パラパラ漫画のようにつなげて映像化したものをイラストアニメーションと呼びます、イラストアニメーションは、日本人にとって、テレビや映画で馴染み深い表現になっていますので、一番イメージしやすいアニメーションの形ではないでしょうか。
◆キャラクターアニメーション
キャラクターが動いて、何かしら行動したりしゃべったりするものをキャラクターアニメーションと呼びます。イラストアニメーションの多くがキャラクターの登場するキャラクターアニメーションですが、特に登場するキャラクターに焦点を当てて話をする場合にこの名称が使われることが多いです。幅広い年齢層に受け入れられやすく、親しみと感心を持ってもらいやすい表現です。
テキストをキャラクターにしゃべらせることで、話し言葉に乗せてやわらかい表現で情報を伝えることができ、テキストのみの表現よりも読みやすい・聞きやすい形になります。また、内容によっては、実在の人物が実写で話すと不快に感じることでも、キャラクターのセリフであれば素直に受け止めやすくなる、といった心理的な効果も生じます。
企業や、その企業ブランドのマスコットキャラクターがあれば、そのキャラクターを通して商品・サービスや企業そのものへの関心に繋げることもでき、キャラクターアニメーションが広報に一役買うことも。
◆ 線画アニメーション
線画を使用したイラストに動きをつけて映像化したものを線画アニメーションと呼びます。いわゆるイラストアニメーションと比べてシンプルな印象となりますが、比較的大人っぽっく、スマートな雰囲気を演出することができます。シンプルさを活かして、あえて白黒で表現された線画の中に一部色を加えることで、視聴者に見てもらいたい部分をより強調するといった工夫もしやすい表現です。
シンプルで余計な視覚情報が無いため視聴するストレスが少なく、線の流れをついつい目で追ってしまうという心理効果も働き、最後まで画面を注目してしまう魅力を持っています。
弊社で作成しているコンテンツの中にも、イラストアニメーションと呼ばれるタイプのものが多くあります。参考までに「トリプルシンキング」のダイジェスト動画を掲載します。
3. ホワイトボードアニメーション
ホワイトボードとペンを使って、イラストや文字を描きながらの説明を映像化したアニメーションです。説明と一緒に「書く・描く」という過程を通して、順序よく情報を伝えることが可能です。実際に板書をするスピードよりも速く、テンポの良い速度に編集されているので、間延びすることなく、視聴者に飽きずに見てもらうことができます。
ホワイトボードに描く手が、実写の場合とイラストの場合、両方のパターンが存在しますが、コンテンツの内容や伝えたいイメージによってどちらかの表現を選択します。どちらの表現にするかによって制作方法も変わってきますので、納期やコストから表現を選ぶこともあります。
こちらも弊社制作のコンテンツより、「テレワークにおける人材育成」のダイジェスト動画を。
4. ストップモーションアニメーション
ストップモーション・アニメーション(Stop motion animation)とは、静止している物体を1コマ毎に少しずつ動かしてカメラで撮影(コマ撮り)したものをつなげて、撮影されたものが連続して動いているかのように映像化されたものをいいます。前述したイラストアニメーションもパラパラ漫画の要領で映像化したものとお伝えしましたが、こちらは写真をパラパラ漫画のようにつなげています。
◆クレイアニメ/パペット・アニメーション
粘土(クレイ)で造形されたものや、人形(パペット)を使ってコマ撮りで撮影されたアニメーション作品をクレイアニメやパペットアニメーションと呼びます。代表的な作品に、「ニャッキ!」「ピングー」「ひつじのショーン」などがあります。撮影用の人形やセットの制作や、ひとコマずつ動かしての撮影など、制作には非常に多くの労力とコストを必要とするため、数分程度の短編アニメーションの作品が多くなります。
◆ピクシレーション
被写体を1コマずつ動かして写真撮影したものをつなげて映像化したものをピクシレーションといいます。実際の人を使って撮影するので実写動画に近い印象となりますが、あえてカクカクした動きにすることで一般的な実写動画とはまた違ったカジュアルな雰囲気を持たせることができ、それが視聴者の目を惹く要因にもなります。ピクシレーションはイラストなどを組み合わせて制作されることも多く、実写の良さを活かしながら、よりシンプルで分かりやすい表現が可能です。
5. 3DCGアニメーション
3DCGアニメーションは、コンピューターグラフィック(CG)をディスプレイを使って3次元で表し、立体的な造形物を作りだす高度な技術を使った動画です。3次元の表現になることで、視聴者に臨場感を伴った体験を可能にし、よりリアルな商品やサービスの魅力を伝えることができます。仮想空間の演出や、電化製品の取扱説明、住宅関連や建築関連のデモなど、幅広い分野での活用が期待できます。
3DCGは制作に時間が掛かります。また専門技術を要するため、アニメーション動画の中ではコストが高額になります。しかし、車などの大型製品や建築物を実際に作って撮影するよりは低コストとなるため、設計図を基に3DCGに起こしてプレゼンを行う際に使用したり、大型の製品を3DCGで映像化したものをTVCMに使うなどの場面では、コスト削減目的で使われたりします。また、ビルを破壊するなど、実写での撮影が難しいものも3DCGが使われることが多いです。
最近では、映画やTVなどで見られるアニメーション作品やゲームなども、3DCGで表現されることが増えてきました。アニメーション作品では、2Dのアニメーションと3DCGを組み合わせて作られたものもありますし、ゲームなどはすべてが3DCGというものも珍しくなくなってきました。また、かなりリアルな表現も可能になってきており、ぱっと見は実写と区別がつかない場合も。技術の発展に大いに影響を受ける面がありますので、これから更に増えていくことが予想される表現です。
アニメーション動画制作で大切なこと
ここまでいろいろな種類のアニメーション動画をご紹介してきましたが、これらは「表現の種類」であり、多くの動画は、これらの表現を複合的に使ってひとつのコンテンツとしています。イラストアニメやパペットアニメなど、一部のアニメーション作品などでは、1つの表現で1つのコンテンツを作りきっているものもありますが、その他TV番組、CM、教材用動画などでは、様々な表現を切り替えて使うことで、視聴者に見てもらう、記憶してもらう工夫としています。実写の一部分にアニメーション動画が使われることがあるのも、飽きさせない工夫の一つです。表現は、1本のアニメーション動画の中で効果的に使われることで訴求力のある作品が出来上がります。
たくさんの表現を盛り込めば良いというものではありませんので、その目的やメッセージを届けたい対象、シーンによって適切に表現を選び、効果的なタイミングや組み合わせを考えることが大切です。
企業がアニメーション動画を採用する際には、シンプルでわかりやすい表現にしたい、より親しみやすいカジュアルな表現にしたい、実写では難しい表現がしたい、など、様々な理由や背景が存在します。
アニメーション動画制作をする際には、制作者とその点をなるべく細かく共有しておくことが重要です。作りたいもののコンセプトや背景事情を制作前にきちんとすり合わせておくことが、制作者から提案されたラフ案を見て、「何か違う…」となってしまうすれ違いの防止につながります。本格的に制作開始してしまってからでは修正が大変になりますし、時間的予算的コストも余計にかかってしまいます。1回の打ち合わせでドンピシャの表現が選定できることは稀ですので、初期段階で部分的な制作サンプルを見せてもらい、本格的に制作開始する前にすり合わせができるよう、しっかりコミュニケーションをとるようにすることをお勧めします。
また、表現手法によっては制作コストが大きく異なるため注意が必要です。パペットアニメーションや3DCGアニメーションなどの制作はかなりコストが大きく、またイラストアニメーションに関しても、リアルな動きや細かな動きの表現を盛り込もうとするとかなりコストがかかります。制作にどのくらいのコストがかけられるのか、また費用対効果の確認など、コストとのバランスを考えた表現手法の選定が必要です。
上記の事柄を簡潔にまとめてみます。
【アニメーション動画制作で押さえるべきポイント】
- 伝えたい情報やコンセプトに合った表現選び
- 予算に見合った表現選び
- 上記2つを、制作依頼時に制作者にしっかり共有する
- 本格的な制作に入る前に、イメージのすり合わせをしっかりする
弊社では、アニメーションを使ったコンテンツの制作・販売も行っております。ご興味がございましたら下記リンクより詳細をご覧ください。このブログ内には無いサンプルも多数掲載してあります。
最終更新日: 2024-07-26