先週末、日本デジタル教科書学会 第6回年次大会(東京大会)に参加してきました。
エレファンキューブは、本学会の設立当初から賛助会員として関わらせていただいております。
昨年はワークショップをやらせていただいたのですが、今回は、いち参加者として参加してきました。
2日間で非常に多くの研究発表があり、もちろんすべては聴講できないので・・・聴講した中で、気になったもの、参考になったものなどをトピックごとにざっとレポートします。
- まだ学会誌は公開されておらず、研究発表のソース情報がないものが多いため、ざっくりとした内容となっていますので、ご了承ください。
- レポートというより、トピックごとの個人の考察のようになってしまっていますが、ご了承ください。
プログラミング教育!
今年、完全にホットなキーワードが「プログラミング教育」。
このテーマの研究発表がかなり多かったです。2020年の小学校におけるプログラミング教育の必修化に向けて関心の高さを肌で感じました。
新学習指導要領の総則で「プログラミングを体験しながら、コンピュータに意図した処理を行わせるために必要な論理的思考力を身に付けるための学習活動」を計画的に実施することが明記されています。
けっこう「プログラミング教育は、プログラミング言語を学ぶということではない」という議論をよく見るのですが、とはいっても「コンピュータを制御する」ということが明記されているので、ICT機器があれば、そのインターフェイスは「プログラミング言語」になるのは自然なことだろう、と様々な取り組みをみて再認識しました。
気になったのは、ほとんどの研究や実践が「ビジュアルプログラミング言語」を使っていたこと。
おそらく一番使われている Scratch は本当に感心するほど多機能でよくできていますし、最初の入口としては楽しいと思うのですが、個人的には、HTML+JavaScript でも Swift でも何でもよいので「テキストエディタでコードをかく」という体験をするのも悪くないのではないかと思うのですが、どうなのでしょうか。ま、指導が大変になるということは容易に想像できていますが。
なるほど、と思ったのは「プログラミング教育」の評価について、
- 教員のほうも評価できるだけのスキルがない
- そもそも、分かりやすい答えを求めるような内容ではないので、何を評価ポイントにするかが定まっていない
というところで、いくつか研究や実践が発表されていました。
今回、本学会で若手優秀賞を受賞した早稲田大学 佐々木さんの
小学校におけるプログラミング教育において活用可能なルーブリックの提案
は、期待度高い感じでした。ソースの公開が待たれます。
若年層に対するプログラミング教育の普及推進報告2017 沖縄県
こちらの総務省のプロジェクトの取り組みでは、子供自身に「わかった」「できた」と評価させたとのことでした。
小学校英語必修化・・・なかった。
同じく2020年の小学校における英語必修化に関しては、特に研究発表などありませんでした。
(私が見られていないだけだったらすみません。)
いま、自然言語の分野(音声認識、音声合成、翻訳、テキスト解析)については、テクノロジーの力がすごい進歩しています。
YouTubeに動画をアップすれば自動で各国語のテロップがつけられますし、Skypeでリアルタイムに翻訳しながら会話もでき、スマートフォンのカメラをかざせば、見えている文字が翻訳されます。
- 最新のテクノロジーを、どう学校の教室という場に落とし込むか
- 教育指導要領がしめす方向性との親和性がどうか
という課題はあるかと思いますが、外国語活動のなかで、新しいテクノロジーがうまく使えると思うんですけどね。。。
少子化待ったなし
誰もが知っているとおり、人口減少社会に突入しました。
文部科学省 安彦広斉 様の基調講演でも、人口急減・超高齢化社会に進んでいく中で、どのような成長・発展モデルを構築していくかという話から、文部科学省としての教育の情報化の取り組みなどのお話がありました。
また、一般研究発表では、へき地や少人数学校でどうICT活用するのか、という実践や研究も複数ありました。
音楽教育への可能性
私自身は、小学校・中学校の音楽の授業の中で「創作活動」をやった記憶が全くないのですが…
指導要領には「創作」という項目があったということを今回の発表で知りました。
いくつか音楽創作に関する研究発表があったのですが、東北文教大学 眞壁豊 先生のNintendo DS用のシンセサイザー「DS-10」を使った発表が非常に面白かったです。
私的には、音楽の授業で「歌う」のは苦痛でしかなかったので、こういう授業があったらよかったのに、と思いました。また、生徒の作品を聞いて「とにかく褒めまくる」とおっしゃっていたのが印象的でした。
発表資料:携帯ゲーム機用シンセサイザーソフトによる音楽教育の実践に関する考察
総務省の教育ICT戦略
2日目の基調講演は、元総務省 御厩祐司 様の講演でした。
パッと聞くと、教育と総務省?というのがピンと来ない感じがしますが、インフラ整備という意味でICT化を推進しつつも、ほんとうに教育現場でいろいろ実践されているということを恥ずかしながら知りました。
クラウドで教育をより良く「教育ICTガイドブック Ver.1」
この資料はなかなか必見です。
総務省 若年層に対するプログラミング教育の普及推進報告2017
上で紹介したURLは沖縄県の事例でしたが、他都道府県も興味深い取り組みがたくさん。
高等教育は、Moodleが人気
研究発表は、小学校・中学校の実践が多いのですが、パネル発表では、高等学校や大学の事例もありました。その中で、LMSという言葉がでてきたら、100% Moodle を使っている事例でした。
教育機関におけるLMSといえば、Moodleスタンダードになっているのか、「研究する」という際にオープンソースの製品が使いやすいという話なのか…
著作権、ビッグデータ、標準化、特別支援教育
その他、上記のようなキーワードが多くありました。
聴講できなかった部分も多いのですが、制作会社として技術面の動向は気になるところなので参考になるものが多くありました。
電子書籍(EPUB)の標準化動向 イースト株式会社 下川和男
こちらの資料は勉強になりました。
とりとめのない記事になってしまい、また少し日が経ってしまいましたが、ひとまず速報まで。
研究発表集は、日本デジタル教科書学会のサイトおよびJ-STAGEにて後日公開されるはずなで、興味ある方は、ぜひご覧ください。
最終更新日: 2017-08-24